
19時、帰宅と同時に平山さんの会社員としての1日が終了。 作家・平山瑞穂としてのスイッチを入れるべく、パソコンの電源をつける。まずは、ブログのコメントに対するレスポンスをしてから食事、続いて入浴。そうして一息ついてから、ブログを書く。22時前後になると、本格的な創作活動の始まりだ。
「プロの作家になろうと志してから、13年後のデビューですからね。長かったですよ。新卒で入った会社に勤めて数ヶ月後に、作家になろうと思ったんです。以来、あちこちに応募してみて、1次予選だけは11回ほど通りました。そろそろ、あきらめたほうがいいのかな、と思っていたときに、日本ファンタジーノベル大賞を獲っちゃったんです」
13年間ものあいだ、作家になることをあきらめずに小説を書き続けたのは、予選を通過したことだけでなく、自分は必ず作家になれるという確信があったからだ。 そんな平山さんが、受賞後も会社員と作家とを兼業しているのは、なぜなのだろうか。
「ひとつめは、経済的な理由です。今は年に2~3冊の本を刊行できていますが、たくさんは売れていません。ですから、印税なんてあまり入らないんですよ。家のローンは組んでしまったし、生活費もかかるので、会社勤めはやめられない。ふたつめは、作品の内容に関わる理由です。僕は、会社員を主人公にした作品をときどき書きますが、そういった作品では、自分が会社員であることがメリットだったりするんです」
兼業作家で大変なのは、執筆する時間をまとめて確保できないことだ。幸い、いま働いている会社の部署は、ほとんど残業がないので、仕事が終わってすぐ帰宅すれば、ある程度は執筆の時間をとることができる。しかし、専業作家のようにフルタイムで書くことができない。
「もどかしいのは、たくさん書きたいけれど、書く時間がないということです。書く意欲はあるし、どう書きたいかも決まっているのに、書く時間がない。毎日、正味2~3時間程度しか執筆時間がないので、続きを書きたくても書けない。執筆が寸断されると、モチベーションが下がったりすることもあります」
作家になれた平山さんだが、二足のわらじを穿くがゆえの苦労も多い。
昨年8月から今年の2月にかけて、平山さんは電子書籍@niftyで『シュガーな俺』を連載した。
「最初は、勝手がわからずに戸惑うことも多かったです。なにしろ、Web上で連載すると同時に、読者からのコメントにも返信したりしていましたからね。Web連載小説では、初めての試みだったと思います」
この連載は、平山さんが編集者に原稿を送り、Webにアップしてもらっていたのだが、推敲を本格的にはやらなかったので、少なからず誤字があった。
「コメントで誤字を指摘されるなど、読者に校正してもらった部分もあります。やはり紙に印刷しないで、データのみのやりとりになると、手軽かつ気楽に作業が進んでしまい、そこにミスが生じる隙ができるということを、つくづく痛感しました」
『シュガーな俺』は、ネットで全文が読めると同時に、書籍として販売もしている。そのことについて、「これでいいのかな?」と平山さんは思ったこともある。しかし、パソコンのモニターで長時間にわたって長文を読むのは、自分だったらキツイ。だから、ネット上の文章でまず興味を持って、書籍を買ってくれる人もいるんじゃないかと思うようになった。
平山さんは、2005年2月にブログを始めた。その前年の12月に処女出版となる『ラス・マンチャス通信』を出した。出足は好調だった本の売れ行きも、だんだん悪くなっていった。
「それで、心配になってきたんです。このまま自分は忘れ去られてしまうのではないか、と。忘れられないためには、こういう作家がいて、日々活動をしているということを示すメディアが必要だと考え、ブログを始めました」
早く始めたかったので、多くの知り合いが使っている「はてな」でブログを立ちあげた。そして昨年、電子書籍@niftyで連載小説『シュガーな俺』を始めるのがキッカケで、タイトルを『白いシミ通信』に変え、ココログに引っ越した。
ところで、平山さんは、作家としての文章とブログの文章とを書き分けているのだろうか。
「作家としてお金をもらう文章と、ブログの文章とで、明確な書き分けはしていません。ブログの文章はエッセイに近いので、商業誌からエッセイの依頼が来たとき、ブログの文章とお金をもらって書くエッセイとを、どう書き分けたらよいのか迷ったりはしますね」
コメントはすべて読んでいるし、基本的に返事も書くようにしている。ブログ主が作家だからなのか、「長文のコメントが多いのが特徴ですね」と平山さん。ブログをやっていて楽しいのは、作品に対する読者の感想を、リアルタイムで読むことができること。また、アクセス数が増えると、次にブログを書くときの励みにもなる。
ブログを書くという行為は、平山さんの日常に溶け込んでいる。だから、書かないと落ち着かない。歯を磨かないで寝ると、ベッドに入ってから「あっ、磨いていない……」と不安な気持ちになったりするのと似た感覚だ。しかし、作家としての仕事が増えるにつれ、ブログ執筆に割ける時間は確実に減ってきている。
「はてなダイアリーでやっていた『黒いシミ通信』のときは、暇だったので時間をかけてブログを書いていました。だから、必然的に完成度の高い記事が多かったと思います。ココログに引っ越してからは、作家業が忙しくなってきたので、いかに短い時間に濃い内容のネタを書くことができるかを考えています」
では、そんな平山さんにとってのブログとは?
「作家として現役で活動していることの証明書なのかもしれません。『ただいま営業中!』という旗印だといってもいいですね。存在証明としてのブログは、備忘録の役割も果たしています。ちょっと覚えておきたいことをブログに書いておくと、あとで確認するときに役立ったりします」
人からは「兼業していて大変ですね」といわれる。確かに苦労も多い。でも、兼業自体がライフスタイルになってしまうと、さほど困難なことでもないと思ったりする。
デビューまでの13年間を、平山さんは「書かねばならない」という強迫的な思いで乗り切ってきた。そして今は、兼業作家としての地盤を築き上げつつある。次なる目標は、もちろん専業作家として一本立ちすることだ。
でも、ひとつだけ言えることがある。それは、今後、平山さんがどんな形で作家生活を送ることになろうとも、彼とブログとの付き合いは今と変わらず同じように続いていくということだ。
<次回予告>
次週は、声優特集第1弾・緒方恵美さんの登場です。人気アニメ『幽☆遊☆白書』
の蔵馬役で人気を獲得して以来、業界の第一線で活躍されている緒方さん。声優
になるまでの紆余曲折と、インターネットラジオを製作するエンターテイナーと
しての情熱を熱く語ってくれました。この秋公開の話題の映画『ヱヴァンゲリヲ
ン新劇場版』の収録秘話も必見です!!
●文 :一文字剛
●撮影:古屋陽子
<ブログ紹介>
平山瑞穂の白いシミ通信
現在のブログ『白いシミ通信』は、これまで別のブログでやっていた『黒いシミ通信』と対をなすもの。日々の出来事や近況などを平山さんご自身が綴っています。内容はもちろん、記事のタイトルなどにもこだわりが。兼業作家のプライベートな日常を垣間見れるこのブログをぜひご覧ください!
セレブの出すお題にトラックバックまたは、コメントで答えてプレゼントをもらっちゃおう! セレブが選んだ優秀作品には、プレゼントがもらえます。どしどしご応募ください!
「あなたが今までに経験したもっともディープな体験を教えてください」(平山瑞穂)

平山さんの著書『忘れないと誓ったぼくがいた』の韓国語版を1名様にプレゼントいたします。平山さんの直筆サイン入り! 装丁が凝っていて素敵な本です。みなさんのご応募お待ちしております!
タイトルに「ココセレブ special プレゼント」と明記の上、お題に対する記事をトラックバックまたはコメントをお寄せください。なお、応募以外の感想などのトラックバック・コメントも随時受付中です!
当選者の方には、ココセレブ事務局よりご連絡させていただきますので、必ず「メールアドレス」がわかるようにブログ内、コメント欄に明記してくださいね。
(今回のインタビューからURLを入力せず名前とメールアドレスのみ入力された場合、名前は表示されますがメールアドレスはリンクされず公開されなくなりました)
終了しました
平山瑞穂さんからコメントをいただきました!
ねむりねこ さん
ご当選、おめでとうございます! のちほど、ココセレブ事務局よりご連絡を差し上げます。
ねむりねこさん、香さん、プレゼント企画へのご応募、ありがとうございました。「ディープな体験」って、お題の難易度が高すぎたかな、と後から反省していたのですが、それにもかかわらず、自らの体験を語ってくださって感謝しております。
ねむりねこさんの「ディープ」体験は、超インドアな生活を送る僕にはまさに想像もつかない世界の話で、たいへん興味深かったです。海の底の「あらがえない魅力」に引き込まれていく様子と、「インストラクターの腕が静止」したというくだりに臨場感が溢れていて、自分もその境地を体験してみたいという強い憧れを感じました。
一方、香さんの体験は、ホームステイをすれば誰もが体験できるというものでもなく、たまたまホストファザーがそういう機会を提供できる立場にあっただけという意味で、非常にレアな経験であったと思います。「フィールズ・オブ・ドリームス」自体がまさに「夢のような」話ですが、これも後から思い返すと「あれは現実のことだったのかな」と疑ってしまうような感触のできごとだったのではないでしょうか。その感じが、よく出ていました。
応募が計2名様ということで、ものすごく選びにくくて難儀したのですが、文字通りの意味も含めて「ディープ度」がより高かったということで、今回はねむりねこさんを選ばせていただきます。でも、どちらの「体験」も、楽しませていただきました。ありがとうございました!
このエントリーのトラックバックURL
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/122498/15343162
※インタビュー記事に対して、リンクおよび言及のされていないトラックバックは削除することがありますので、ご了承ください。
コメントを書く
コメント
与論島でのダイビング、50m!!
文字通り『深い』体験なんですけど、言葉遊びではなく、水中50mの世界ってまるで違う宇宙なんですよね。
入水地点からなだらかにでは無く、水面から垂直に50m『潜る』というよりも、重力に身を任せてゆっくり『落ちて』ゆきました。
深度計の針が、15、20、30、と進んでゆくのとともに、自分の廻りの温度がどんどん下がってゆき、陽光が徐々に遠くなり、今まで出逢った事のない無音の世界、行った事の無い世界、そして自分が決して属しては居ない世界にずんずん引き込まれてゆきました。
35m視界が利く透明で温和な海水、同じその優しいはずの水が、すこしずつ深くゆくごとに自分の知らない、ちょっと恐さを秘めた水へと変ってゆきました。40、50と針が進んでゆき、そのまま止まる事無く、知らない世界へ行ってしまうのでは無いか?
もう戻れない世界へと落ち続けてゆくのでは無いか、、、、。
自分が今どうするべきなのか考えると言う事すら忘れそうになっていたその時に、しっかりとしたインストラクターの腕が私を静止しました。
深度のせいか、興奮しているからなのか、呼吸はいつもよりも荒く、ひとつの呼気が意味深く、、、。
知らない世界に恐怖を感じながらも、あらがえない魅力にも取り憑かれ、この場にずっと漂っていたい思いに捕われて、怖いながらも、優しさに抱かれて、、、。
本当に不思議な体験でした。
『母なる海』という意味が、この時から分かるようになった気がします。空の高みにある宇宙と、水の底の世界、もしやどこかが似ているのでしょうか・・。
投稿 ねむりねこ | 2007/06/12 3:49:06
私の初の海外は、20歳の時、アメリカ・ロサンゼルスでの一ヶ月のホームステイでした。ホストファミリーは、ホストファザーが30歳、ホストマザーが33歳の姉さん女房夫婦。あの時点で子供がいませんでしたが、なんと私の滞在中に妊娠がわかったのですよ!それも、とても素敵な出来事でした。
ところで、ある日、ホストファザーが「これからいいところへ連れて行ってあげる」と私を車に乗せ、かなり遠いところに連れて行きました。
暗い建物が立ち並ぶ、ちょっとおどろおどろしいところで車から降ろされ、全く見当がつかないまま入ったその建物内では、白黒の映像が流れていました。
流れていた映画は「ダンス・ウィズ・ウルブス」。
なんと、そこは出来上がった映像に音を入れていく音響スタジオだったのです!!
今でこそ”落ちぶれた感”があるケビン・コスナーですが、
「フィールド・オブ・ドリームス」が大ヒットした後の、ノリに乗った彼が初監督・主演を務めた作品です。後に、これでアカデミー賞もゲットしました。
「ロビンフッド」の公開も決まっていました。
その、ケビン・コスナーがそこにいたのです!!
大、大興奮でした。
ホストファザーが『ダンス~』のプロデューサーと友達だということで、話をつけてくれて、私をケビン・コスナーに会わせてくれたのでした。
映画の編集作業ということで、普通のおっさんにしか見えないほどの、よれよれのノン・ブランド・ポロシャツを着て、無精ひげも生やしていた彼は、とても気さくでした。
「ああー、英語が話せれば!」と後悔しても、時すでに遅し。とりあえず、『フィールド~』を観たということは告げてみました。
握手してもらい、写真を撮るときにはハグというより、私の顔がつぶれるほどぎゅーっと抱きしめてくれました。
「ロビン・フッド」用のブーツも履かせてもらって、もう一枚記念撮影。
何をどうしていいのかわからず、頭が半分真っ白で、「あー、サインをもらってくるべきだった!」と思ったのは帰りの車の中でした。
こんな素敵な体験をさせてもらったホストファミリーに感謝です!
投稿 香 | 2007/06/16 16:28:00