
茂木さんの1日は、ブログを書くことから始まる。毎日更新しているブログは『クオリア日記』、2006年12月からは『The Qualia Journal』(『クオリア日記』の英語版、毎日更新)を、そして今年1月からは、『プロフェッショナル日記』(NHK 『プロフェッショナル 仕事の流儀』の現場の様子を伝えるブログ。随時更新)も始めた。
従来の脳科学に関する研究活動に加え、大学教授としての仕事、書籍や雑誌の原稿執筆、テレビ出演、講演などで多忙をきわめる茂木さんだが、ブログを書く朝の時間はどんなことがあっても確保するようにしているという。「ブログの更新は仕事の二の次」、本業が忙しければ日記を書く頻度も下がるというような考えが普通であるとしたら、茂木さんのブログにかける思いには異常なまでの熱っぽさがある。どうして茂木さんはここまでしてブログの執筆に力を入れるのだろう。そして、なぜ自分の日記を公開しようと思ったのだろうか。
「僕がウェブで日記を公開しはじめたのは1999年11月からです。基本的に、ネット関連の各ツールを使いはじめたのも早いほうで、掲示板から始まり、メーリングリストやメールマガジンも出はじめから使っていました。当初、自分の日記も掲示板を使って公開していたんです。ただ、初日のアクセス数は100しかなかったんですよ(笑)」
そして、約3年前、「ブログ」という新しいサービスが登場したという噂を耳にした茂木さん。だが、しばらくはブログには手を出さなかった。そんな茂木さんが、掲示板で公開していた日記をココログに移行したのは2004年9月のこと。では、茂木さんが掲示板をやめて、ブログを使い始めようと思った理由は何なのだろうか。
「あるとき掲示板とブログの大きな違いに気づいたんです。それは『固定リンク』がつくかつかないかという部分でした。つまり、各記事ごとに個別のURLがつくかつかないか、ということです。掲示板で日記を公開しても固定リンクがないのでどんどん記事が流れていってしまう。アーカイブ性がないっていうのかな。つまり、それまでは僕自身も読者もどこに何が書かれているのかわかりにくかったんですよね。
ブログにはコメントやトラックバックといった機能もありますが、一番の大発明は『固定リンク』という機能にあると思います。要するに、記事単位で互いにリンクを貼ることができるようになったということですね。その機能があったからブログに移行したんです」

ココログに移行してから、茂木さんはほぼ毎日ブログを更新している。そして、読者からのコメントやトラックバックは必ず翌朝にチェックし、承認したもののみを公開するようにしているという。ただでさえ忙しい茂木さんが、読者から送られてくるコメントやトラックバックを逐一チェックしているのには何か理由がありそうだ。
「コメントを読んだり、トラックバックをたどっていくと自分の勉強になることが多いんです。10人が僕のブログを読んだとすれば、その10人それぞれの異なった読み方になるんですよね。たとえば作家の村上春樹さんは、『読者が自分の作品を読んで誤読されたものの総体が自分の作品なんだ』と言っています。ブログの場合は誤読とまでは言いませんが、自分の日記がさまざまな形で読まれることを知ることにより、刺激を受ける。あとは、読者の方もブログを読んで心を動かされたときに、その思いを書き手に伝えたいと思うことがあると思うんですよ。そういう思いで僕の記事に反応をしてくれる読者を、僕は大切にしたいんですよね。だから、そのためにもコメントやトラックバックを開放しているんです」
茂木さんは朝起きたと同時にコーヒーを入れ、机に座った瞬間からブログの記事をタイピングする、という生活を送っている。「何をテーマに書こうとか、文章どうしようと逡巡する時間はまったくない」そうだ。そして自分の無意識から出てきた言葉の連なりのなかから、記事のタイトルを選んでいる。確かに、小説などでは本文のどこかにある言葉をタイトルにすると、その言葉を探す楽しみがあったりするものだ。こうした流儀もブログを書きながら学んでいるのだという。
また、茂木さんはブログによく自分の講演などの音声ファイルをアップしている。当初は、音声に特に興味がなかったという茂木さんだが、ある時、小林秀雄さん(評論家)の話を音声ファイルで聞いたことに刺激を受けて以来、自分のブログでもアップするようになった。現在では、自分の講演を「音声ファイルをインターネット上に公開して初めて完結する」という位置づけで捉えているという。
文章を書く力を磨き、さまざまなブログの機能をフルに活用する茂木さんにとって、記事を毎日更新するということはどのような意味をもつのだろうか?

「宇宙から帰還した飛行士や他国から帰ってきた外交官が、記者などを集めて自らの任務や体験などを報告したり、質問を受け付けたりすることを英語で『ディブリーフィング(debriefing)』と言います。つまり、前日に起きた出来事を振り返ったり、その印象をブログに書くことはこのディブリーフィングに近い行為なんですよね。
ポイントは、『前日のディブリーフィングは翌朝にやってしまう』ということ。脳の記憶のメカニズムは、その日いろいろ経験したことを夜の睡眠の中で整理するんです。だから、私は自分の中に残ったアイデアを毎朝書き留めているというわけ。そのアイデアのいくつかはその日のうちにしか思いつけないものだから、それをなるべく早いうちに書き留めておきたいんです」
さらに、茂木さんはブログの文章自体をひとつの作品として意識しているという。1999年に掲示板を始めたときには、茂木さんはすでにプロの物書きだった。しかし、無料で文章を公開していると、「なんでそんなことをやっているんだ」と言ってくる人がたくさんいたという。確かにプロの物書きのなかには、ブログを有料で公開している人もいる。でも、茂木さんは絶対に無料公開を貫こうと考えた。
「フリーというのは『無料』の意味であり、『自由』の意味でもあります。僕は無料で公開するということに加え、誰もがアクセスできる自由な環境を確保したかったんです。だけど、フリーの日記だからといって質は落としたくありません。ブログを続ければ続けるほど、そういう気持ちが強くなっていきました。 徳間書店さんが2004年と2005年の僕のブログを整理して、『やわらか脳』という本を出してくれました。この本によって、アクセスフリーの日記でありながら、活字化しても売れるというビジネスモデルができたと思います。今では、僕の人生で書くものの中の代表作の一群がこのブログから生まれるかもしれない、という意識も持っていますね」

茂木さんが突然、こんなたとえ話をしてくれた。「もし夏目漱石が生きていたら、彼はブログを使って小説を書いていたのでは?」というのだ。東京帝国大学の教授職から朝日新聞に転職し、小説を書いた夏目は、当時、もっとも不特定多数の読者に伝えることのできる媒体が新聞小説だと考え、安定した大学教授のポストを捨てた。「夏目が新聞小説に見出したメリットを今の時代で考えると、ブログになる」と茂木さんは言う。
「ブログというのは『不特定多数の読者への贈り物』であり、誰もがそういう意識で書くべきだと僕は考えています。有名人のブログなどでよく見られるのは、片手間に書いているような文章だけど、『もっと本気で書いてほしいな』と僕は思いますね。多くの人はブログというものを甘く見ている気がします。そんなに甘いもんじゃないですよ、ブログというものは」
この刺激的な言葉からは、ブログと真剣に向き合う茂木さんの強い意志が感じられる。 茂木さんの人柄がそのまま表現されている『クオリア日記』。明日の朝も茂木さんは、不特定多数の読者に贈るための日記を更新する。どんなに忙しくても、どんなに疲れていても……。
<次回予告>
次回は、ブログだけにとどまらずインターネット全般についての茂木さんの考えを大公開。脳科学者ならではの意見がたくさん詰まった読み応えのある内容になっています。甘くないブログの正体とは? どうぞお楽しみに。
●文:谷川茂
●撮影:上村写真事務所(上村明彦)
<ブログ紹介>
『クオリア日記』
研究、大学教授、テレビ出演、執筆、対談、講演など、多くの仕事をこなす超多忙な茂木さんが毎日更新し続けているブログが『クオリア日記』。脳科学者の日常が垣間見える貴重な記事が満載だ。また、クオリア日記の英語版である『The Qualia Journal』やNHK 『プロフェッショナル 仕事の流儀』のブログ『プロフェッショナル日記』も公開中。
セレブの出すお題にトラックバックまたは、コメントで答えてプレゼントをもらっちゃおう! セレブが選んだ優秀作品には、プレゼントがもらえます。どしどしご応募ください!
「あなたの『レディメイド』作品を募集します」(茂木健一郎)
『やわらか脳』(徳間書店刊) 『「脳」整理法』(筑摩書房刊) 「Brutus ~脳科学者ならこう言うね~」(マガジンハウス刊)を各1名様にプレゼントいたします。 茂木さん直筆のかわいいイラストとサイン入り!
今回の応募のみ 、茂木さんのブログ『クオリア日記』の「レディ・メイド作品 募集」という記事(お題の詳しい内容や応募方法が書かれています)にトラックバックしてください。これで応募完了となります。
(茂木さんのブログの他の記事にトラックバックしても無効となります)
当選者は茂木さんが選ばれます。当選者の方には、ココセレブ事務局よりご連絡させていただきますので、必ず「メールアドレス」がわかるようにブログ内、コメント欄に明記してください。
※当選のお知らせメールをお送りしてから14日以上経過しても送付先に関するご返信をいただけない場合は、当選が無効となる場合があります。ご注意ください。
なお、応募以外の感想などのトラックバック・コメントはこのページでも随時受付中です!
終了しました
everyday people @ JUGEMさん
THさん
ゆきすけさん
ご当選、おめでとうございます!
のちほど、ココセレブ事務局よりご連絡差し上げます。
ご応募いただいたみなさま
この度、当選者発表に大変時間がかかってしまいましたことをお詫び申し上げます。
長らくお待たせしてしまい、まことに申し訳ございませんでした。
本来ならば、茂木さんに当選者を決めていただくところですが、
大変ご多忙のため、今回は事務局で抽選という形をとらせていただきました。
これ以上、当選者発表を遅らせることができないと判断したため、
抽選で当選者を決定させていただきましたことをご理解いただけますと幸いです。
ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
2008年4月14日
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1冊/週の新書・第5週・・・『ひらめき脳』茂木健一郎(新潮新書) from 飾釦
★★『ひらめき脳』茂木健一郎★★ “「人生を変える」「人生をやりなおす」ためには、一瞬のひらめきこそが最高の妙薬であり、それを起こすための「インフラ」は誰のアタマの中にもある。” 先週に引き続き脳科学者・茂木健一郎氏の本を取り上げました。茂木氏は今最も多忙かつ著名な旬な科学者と言っていいでしょう。そのメディアで露出されている一側面からしか判断できませんが氏が受け入れられている理由として、着眼点の新しさとともに語り口の軽やか...[続きを読む] 2007/03/08 22:10:12
みんなみんな生きているんだ友だちなんだ!! -茂木健一郎さんの記事によせて(1)- from カウンセラーこういちろうの雑記帳
しばらく前に、たまたまWikipediaで見つけた「クオリア(Qualia 感[続きを読む] 2007/03/19 22:33:33
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コメント
茂木博士が、これほどまでにブログに熱意を持って取り組んでおられるとは。とても感動しております!
先生は、ひょっとしたら、21世紀の夏目漱石となられるのかもしれません。
投稿 銀鏡反応 | 2007/03/14 19:39:33
そういえば発表は、まだでしょうか・・(笑)。
投稿 あの、 | 2007/06/04 17:57:16
発表遅すぎですね。
対象者へ連絡つかないのかな。
投稿 ブルオニ | 2007/06/05 6:52:23
もう、七夕が過ぎたし、別の季節がめぐって、来ましたよ、
春には春、夏には夏の季語があります。
衣替えしているのに、まだ、発表がないということは、
何らかの支障があったのでしょうか、心配です。
茂木さん本人ではなく、
このサイトの関係者の誰かが、何らかのコメントをしないと、
礼節をなくします。
投稿 葉っぱ64 | 2007/07/11 9:11:40
>3月8日~3月22日(当選者発表は3月29日当記事内にて)
※諸事情により当選者発表が遅れております。大変申し訳ございませんが、もうしばらくお待ちください。
もう半年経過しましたよ、
こちらの管理人の方は放置しないで、
何らかのアナウンスをしないと、信用を下げることになってしまうのではないですか、
ビジネスの基本だと思いますが、長すぎますよ、
投稿 葉っぱ64 | 2007/10/16 21:10:54
有名人のブログ。つまらな過ぎです。
内容のある事を書いたら、出版社の皆さんの儲けが無くなるからでしょうかね。美味しいところは出すなという圧力があったりして。
何回か見たら、もう見る気なくなります。よっぽどのファンじゃないと見ないと思います。
でも、有料の有名人の本も、別に内容のある事書いてないし、要するにからっぽ?毎日もっといろんなこと感じて生きているはずなのに。
投稿 ねこ | 2008/05/28 21:00:36