
10月に初の連作小説『恋する放課後♪』(幻冬舎文庫)をリリースしたばかりで、11月公演の主演舞台『田園に死す』(劇団『A・P・B-Tokyo』公演・寺山修司作品)を控えた川上史津子さんに、まずはご自身が芝居に目覚めたきっかけについて聞いてみた。
「演技というものに感動した一番古い記憶は、わたしが小学生の頃に観た、山岡久乃さん主演のテレビドラマ『母ちゃんの黄色いトラック』です。山岡さんが一人でトラックを運転して、プロパンボンベを運ぶ肝っ玉母さんみたいな役でした。ドラマの中で悲しい出来事があって、山岡さんが悲しいのを隠すため、『どんぐりころころ』をやけくそみたいに元気に歌われたんです。その瞬間、ボロボロボロって涙が音を立てて落ちてきました。そのとき、『お芝居って、凄い!』と思ったのを覚えています」
それから、小学校・中学校と演劇部、高校では音楽部でオペラ公演と、演じることに絶えず関わってきた。将来はやはり演劇の道にと、大学は日本大学芸術学部演劇学科を選択。大学では演技コースで俳優の勉強をしながらミュージカルのクラブにも所属し、芝居に明け暮れる日々を過ごす。卒業後、アングラ小劇団として知られる『月蝕歌劇団』に出演するようになった。月蝕歌劇団は、劇作家、詩人、歌人、演出家、映画監督など幅広い分野で活躍した、寺山修司(70年代のアングラ文化を築いた代表格といっても過言ではない人物。1967年に演劇実験室・天井桟敷を結成。同劇団には、横尾忠則氏や九條映子氏、美輪明宏氏などとも関わっていたことでも知られている)氏の流れを汲む劇団だ。
「大学では、朝から晩まで、跳んだり跳ねたりしてました、今はダイブなまけてますが……(苦笑)。大学を卒業してからは、特にどこの劇団にも所属することはなかったのですが、ご縁があって『月蝕歌劇団』に客演するようになりました。『月蝕歌劇団』主宰の高取英さんは、寺山さんの文筆業のブレーンをなさっていた方で、寺山さんの勧めで、月蝕歌劇団を作られたそうです。わたしにミュージカルの経験があるということで、初めて参加した作品から、出演だけでなく劇中の振り付けも任されまして、結局かれこれ、客演のまま7年間おつきあいさせていただきました」
こうして、寺山修司作品を中心に活躍していく。2006年からは、月蝕歌劇団で共演していた高野美由紀さんが主催する劇団『A・P・B-Tokyo』に参加するようになる。
「『月蝕歌劇団』に初参加した頃の主演女優が高野美由紀さんで、高野さんが作られた劇団が、『A・P・B-Tokyo』です。2005年の暮れに出演した俳句の会のイベントで、わたしが寺山さんの詩と俳句を朗読したのを高野さんが観てくれて『また一緒にやろうよ。うちにも出てよ』って。2006年の6月に続き、11月も寺山修司作品で出演することになりました。しかも両方、少年役。来月の公演『田園に死す』では、おかげさまで主演させていただくことになりました」
芝居ばかりでなく、歌人や作家として活躍されている川上さん。こうした文筆業のルーツも寺山作品にあるらしい。
「短歌を詠み出したり、モノを書き出したり……もちろん芝居もそうですが、きっかけは、月蝕歌劇団から寺山作品に触れて『ああ、この世界、わたしは好きだな』と。日本人が生まれながらにして血の中に持っている『懐かしさ』を感じたんです。『田園に死す』だと、恐山の描写や、母と子の断ち難い縁……そういう、なんともいえない日本的な“湿り気”もあって。実体験もないのに、寺山さんの描く風景はわたしにとってなぜか“故郷”のようだなぁと。あと、単純にもう、寺山さんの『人を楽しませたい』っていう精神がすごく好きなんです。劇作家で詩人、映画監督や舞台演出もして。とにかく、人に『面白い』と評価されるのが、きっと大好きだったんでしょうね。わたしも、そんな風になれたらなと。『綺麗』、『素敵』と言われるよりも、『し~ちゃんって、面白い!』が、わたしにとって最高のホメ言葉ですね(笑)」
処女歌集『恋する肉体』(Amazon.co.jp 歌集部門で1位を記録)が出版されるまでのエピソードは「All About(オールアバウト)」のインタビュー『アーティスト・インタヴュー~Part 30 えろきゅん歌人~川上史津子さん』でも紹介されているが、そもそもなぜ、表現する手段として短歌を選んだのだろうか?
「わたし、もともと他人の短歌を読んだことがなくて、あるとすれば中学や高校の時教科書くらい。では何で短歌を詠むようになったのかなと考えたら、やっぱり寺山さんの影響ですね。月蝕歌劇団で寺山作品を上演する時は、必ず最後に暗転にして、マッチを10本ぐらい束ねてそれに火をつけて顔を照らし、出演者ひとりひとりが寺山さんの短歌や言葉をワーッと叫ぶんです。最後に全員で、特に有名な短歌、『マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや』って叫んで、ぱっと火を消して、舞台が終わるという感じ。だから、わたしの中には自然に短歌のリズムが入っていて、自分の想いを切り取るのに、5・7・5・7・7がちょうどいい形だったのではないかと。もし、寺山ワールドを知らなかったら、わたしの胸から飛び出してきた言葉を短歌にしようと思ってなかったでしょうね」
2004年9月から続いている川上さんのブログ『パイロン』。タイトル『パイロン』の由来と始めたきっかけについて聞いてみた。
「誕生日を機にブログを始めてみようと思っていたところ、友人が『ココログが使いやすいよ』と教えてくれたんです。小学生の頃、ものを書く習慣が全く無くて、クラスの交換日記も止めちゃいがちだったわたしですが、こんなに長く続けることができました! 最初は、どれくらい書いていいか分からなくて、記事がすごく長くなっちゃってたんです。カメラ付き携帯を入手してからは、アッと思った時に携帯で写真を撮っておいて、モブログで送って、あとで書き足す、といった感じで更新のペースをつかんできましたね。ブログをやるようになって、書くことが日常になり、今では、喋る早さで言葉を綴れるようになりました。
ブログのタイトルにもなっている『パイロン』というのは、工事現場で見かける、赤い三角帽子のような障害物ですね。「カラーコーン」と呼ばれるほうがメジャーなようですが、わたしの中では、赤くてあの形をしたモノが「パイロン」という名前であることが“完璧”なんです! カタチといい名前といい、もう好きで好きで、たまらなくて(笑)。好きなものをタイトルにしようと、直感で決めてヘッダ用のイラストを作ってもらって、大好きな感じに仕上げてもらいました」
それまで、日記を書き始めても三日坊主だったという彼女が、今ではブログだけでなく SNS サービスでも日々の出来事を綴っているという。それでは、川上さんにとってブログ『パイロン』はどのような存在なのだろうか。
「『パイロン』は、わたしの“公式の情報発信ツール”です。自身の舞台・イベント出演や出版・連載等、活動情報の告知の他に、『こんな素敵なイベントやライブを体験したので、みなさんもどうぞ! 機会があったら一緒に行きましょう!』って、わたしが心からオススメしたいものもご紹介しています。SNS には愚痴や H なネタも勢いで書いちゃっているのですが(笑)、ブログには読んで楽しくなるようなことばかり書いていきたいし、“お子さんからお年寄りまで安心して読める内容”を心がけています」
そんな公式サイトとしての位置づけのブログは、イベントの感想などのコメント・トラックバックをつけてくれる読者との交流の場でもあるという。
「芝居を見てくれた方や、イベントに来てくれた方が感想をくれるのが、すごく嬉しくて。わたしの本や朗読作品、出演舞台・イベントに関して「ご感想お待ちしてます」というカテゴリを作ってあるのですが、感想のコメントをもらったら『そうでしたか、こうやって読んでくれたんですね』ってコメントでお返事もしますね。
わたしは、普通の作家さんよりも舞台やイベントに出ることが多いので、顔を知ってもらう機会は多いのですが、イベントの最中はバタバタして、お越しいただいた方とじっくりお話できないことが多いんです。でも、熱心な方が検索して『パイロン』をみつけてくれて、『見ていました』ってメールをくれたりするのが、本当にありがたいですね。ブログは、お客さまや読者のみなさまが、わたしに直接連絡を取ろうと思えばできる……そういうふうに、いい距離感を保てるのがいいところです。わたしにメールしたいと思ったら、ブログのプロフィール欄からメールをお送り頂くことも出来ますし。また、いただいたコメントのお返事をメールでさせていただくこともあります。もちろんコメントやトラックバックは大歓迎です。お仕事のこと以外でも、ブログに書いた小ネタにぜひツッコミいれてほしいですね(笑)」
川上さんの執筆活動は、書籍だけにとどまらず、作品の電子書籍化や携帯電話向けの小説、朗読のポッドキャスティングなど、ネット媒体にもその場を広げている。2006年9月にリリースした『えろきゅん』電子書籍 with 著者朗読版は、発売2週目に週間ダウンロードランキングと、エッセイ/恋愛小説部門で1位を獲得している。こうしたネット媒体でのお仕事をはじめたきっかけは?
「ポッドキャストとか携帯小説などもいろいろオファーがありますね。著書を読んでいただいたり、何かのイベントで媒体の方にお会いしたりして、『じゃあ、ちょっとウチでも連載を……』といった感じです。11月から始まる連載小説は、6月の芝居を見に来た方が、外で自分の本を手売りしている私を見て、後から『パイロン』のメールフォームを通じて声をかけてくださったんです。『パイロン』が、きっちり仕事の窓口になってくれています。今は、自分から売り込んで、何かやらせてくださいっていうのは、ほとんどなくって、『書きませんか?』と誘われたり、『ウチで携帯小説やりませんか?』って言われたりして、『ハイハイハイ、なんでもやりまっせぇー!』って、積極的にお受けする感じですね(笑)」
舞台の稽古中は、芝居に集中するため役者モードになる川上さん。最後にあらためて11月公演の主演舞台『田園に死す』についての意気込みを聞いた。
「寺山修司さんの有名な映画『田園に死す』を舞台化します。寺山さんを好きな人も、今回はじめて寺山作品を知る人にも、楽しんでもらえるよう頑張ります。わたしは、芝居になったら日常の、モノ書きだとか三十五才の女性であることとは、まったく関係なく役に集中します。“ハンカチ王子”くらいに頭を丸めた少年役の川上史津子を、ぜひ、観にきてください!」
遠すぎず、近すぎず……川上さんとの「いい距離感」と楽しいお話が味わえるブログ『パイロン』。舞台や、歌集、小説、イベントなど、川上さんの作品を見て何かを感じたら、感想をトラックバックやコメントしてみよう。
<次回予告>
「木村伊兵衛写真賞」も受賞した、水中写真界の大御所・中村征夫さんにご登場いただきます。中村さんの生い立ちからプロカメラマンになるまでの道程、海や写真への思い、そしてブログについて熱く語っていただきます。カメラマンならではの写真撮影指南も盛り込む予定! ブログに UP する写真に関して悩んでいる人もそうでない人も、中村さんの楽しいインタビューは必見です。
●文 :森 英信
●撮影:斉藤 泉
<ブログ紹介>
『パイロン』
川上さんこだわりの“アレ”をデザインにあしらったブログ、その名も『パイロン』。三日坊主を克服(?)して日々綴られているこのブログでは、舞台や、朗読イベント、本の出版などの情報から、川上さんのさまざまな“素敵”な体験までギッシリ!
取材協力:ラピュタ阿佐ヶ谷
〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北2-12-21
TEL:03-3336-5440
http://www.laputa-jp.com/
小劇場「ザムザ阿佐谷」(B1F)、映画館「ラピュタ阿佐ヶ谷」(2F)、レストラン「山猫軒」(3、4F)を備えた、文化複合施設。
劇場「ザムザ阿佐谷」では、川上さん主演の『田園に死す』が11/16~19まで上演されます。
セレブの出すお題にトラックバックまたは、コメントで答えてプレゼントをもらっちゃおう! セレブが選んだ優秀作品には、プレゼントがもらえます。どしどしご応募ください!
「最近の胸が“きゅん”としたできごとを短歌にして送ってください。 もし短歌にするのが難しかったら、そのまま“胸きゅん”エピソードを送ってくださいね!!」(川上史津子)
ひょっとしたら、あなたの“胸きゅん”エピソードを、川上さんが短歌にしてくれるかも!
10月に発売された著書『恋する放課後♪』を直筆サイン入れて3名様に。
「わたしにとって初の文庫になります。2004年2月から2005年8月まで、ニッポン放送携帯サイトで連載した作品に大幅に加筆しました。学生さん達は、授業が終ると放課後ですよね? 私も大学を卒業してもう十数年経ちますが、私たちのような大人にとって、今は長い「放課後」のようなもので、ずっとずっと死ぬまで恋して過ごすのではないかなぁ……? そんな意味を込めて『恋する放課後♪』というタイトルをつけました。特に若い世代の方に、『恋するって、素敵なことなんだ!』と思って頂けたら嬉しいです」(川上史津子)
タイトルに「ココセレブ special プレゼント」と明記の上、お題に対する記事をトラックバックまたはコメントをお寄せください。なお、応募以外の感想などのトラックバック・コメントも随時受付中です!
当選者の方には、ココセレブ事務局よりご連絡させていただきますので、必ず「メールアドレス」がわかるようにブログ内、コメント欄に明記してくださいね。
2006年10月25日~11月16日(当選発表は11月24日です)
「川上史津子です~! みなさま、インタビューお楽しみ頂けましたでしょうか? トラバとコメントをお寄せ頂きましてありがとうございました! 2名さまずつということで、当選者を1名増やさせて頂きました♪ 拙著『恋する放課後♪』をサイン入りでお贈りします。ご感想お待ちしておりまぁす!」(川上史津子)
飾釦 さん
飾釦さま、インタビューへのトラバだけでなく劇場に足をお運び下さり、ご感想をレポートして頂けて大変嬉しかったです! 川上の芝居もお気に召して頂けたようで光栄です♪
ブログライブさん
ブログライブさま、“きゅん”とした短歌をありがとうございました! たとえ目の前にいなくても、ブログライフさまには彼の姿が見えているのでしょうねぇ。恋するこころに共感して頂けたようで嬉しいです~♪
川上公一さん
川上公一さま、同じ名字ですね! 頂いた句は5・7・7・5で、初句が7ならば都都逸でしたねぇ♪ ありがとうございます。応援して頂き感謝×感謝です。これをご縁に、是非「パイロン」へもコメントしにいらして下さいませ。
雨水。さん
雨水。さま、お寄せ頂いた短歌、かなりイイです! 特に最近はメールのやりとりが主で、好きな人の「筆跡」を目にする機会って減ってきてますものねぇ~。「甦る想い」が字余りになってしまったのだけがモッタイナイ! 「溢れる想い」or「甦る日々」なんていかがでしょ?
<編集部より>当選者の4名様にはこちらよりメールを差し上げます。
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乱歩を巡る言葉25・・・盲人書簡・上海篇/寺山修司 from 飾釦
盲人書簡・上海篇/寺山修司 寺山修司の戯曲6/思潮社 「天井桟敷」という劇団を引っさげて時代を疾走した寺山修司。ボクはリアルタイムで寺山氏が生きて活躍していた様子はよくは知らないが、彼の死後、妙に気になって寺山の遺産である劇団「万有引力」の芝居を何本か観たりしたことがある。寺山修司の劇作による芝居は、生みの親である主人がそこに居なくても舞台は新鮮で過激、その熱意は間違いなく観客席に届いてきました。 そして先日、...[続きを読む] 2006/10/27 0:40:06
ココセレブ special プレゼント希望 from ブログライブ
「恋することって素敵なんだ。」いい言葉ですね。感銘を受ける言葉というのは、シンプルイズベストなものがいいです。『恋する放課後♪』文庫版楽しみです。是非とも読みたいです。 ブログ『パイロン』は、舞台や、...[続きを読む] 2006/11/02 12:11:00
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コメント
前略か、拝啓かどうでもいいですね。
以前から興味は有ったのですが、なかなかメールを書くチャンスがなくて。私のHPは未だ修理中(見ることはできますが)なんです。写真が好きなもので、日本中でメルトモはいます。そうそう、句でしたね。下手糞ですが私も好きなんです。関西フォークの頃から。
「まだ見てる。恥ずかしいから、後ろ向いたら掛け時計」なんて、お粗末でした。これからも頑張って下さい。応援してますから。私のペンネームは「河内太郎」で~す。おやすみなさい。失礼しました。
投稿: 川上 公一 | 2006/11/02 22:23:21
何年も経っているのに筆跡を 目にしただけで甦る想い
こんばんは~
最近、きゅんとした出来事でした~
なんとも、個性のつよいひとでした~。。。
投稿: 雨水。 | 2006/11/03 17:52:56
当選したんですか?ありがとうございます。私は「田園に死す」のお芝居を観てから寺山にのめり込んでしまいました。今歌集「田園に死す」を読んでいます。しびれます。川上さんの歌もたのしみです。
投稿: 飾釦 | 2006/11/27 23:10:05
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